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Claudeがこっそり性能を下げた?effortレベル削減問題とユーザー反発の全貌

この記事はこんな人におすすめ
  • Claude CodeやClaude APIを日常的に使っているエンジニア・開発者
  • 「最近Claudeの動きが遅い、質が落ちた」と感じている方
  • AI企業の透明性や利用規約の変更に関心がある方

「6,852セッション分析した結果、2月以降でClaude Codeの思考ブロック長が67%低下していた」。こう告発したのはAMDのAIグループ上級ディレクター、Stella Laurenzoだ。2026年4月2日にGitHubに投稿されたこのissueは、17,871個の思考ブロックと234,760件のツール呼び出しを根拠にしており、「感覚ではなくデータ」として大きな反響を呼んだ。

Fortune、Axios、VentureBeatなど複数の大手メディアが相次いで報道。「AnthropicはClaudeをこっそり性能低下させた(nerfした)のか」という問いが、開発者コミュニティ全体に広がった。

この記事では、何がどう変わったのか、Anthropicはどう説明しているのか、そして自分でできる対策を整理する。

何がいつ変わったのか:3つの静かな変更

Anthropicが2026年2〜3月にかけて加えた変更をまとめると、以下の3点になる。

日付変更内容
2026年2月9日Opus 4.6でadaptive thinkingをデフォルト化
2026年2月12日UIでの思考ブロック表示を一部非表示(redaction)に変更
2026年3月3日デフォルトのeffortレベルを「high」→「medium」(85)に引き下げ

このうち最もインパクトが大きいのが3月3日の変更だ。effortレベルとはモデルが各リクエストにどれだけ「考える」かを制御するパラメータで、「medium」に下げることで思考トークン数が大幅に減少する。ユーザーが受け取る回答の見た目は変わらないため、気づきにくい変更だった。

GitHub上でもBUG: Settings effortLevel "max" silently downgraded(issue #30726)という報告が上がっており、「明示的にmaxを設定していたはずが、medium相当で動いていた」という事例も確認されている。

「劣化した」は気のせいじゃなかった:ユーザーの証言

開発者コミュニティでは、以下のような具体的な不満が相次いだ。

  • 複雑なワークフローで途中でタスクを放棄する
  • 指示に従わず、勝手に簡略化した手順を選ぶ
  • 長い推論が必要なコードレビューで誤りや矛盾が増えた
  • Claude Code上で「effortレベルをmaxにしているのに重い処理で手を抜く」という動作

Stella Laurenzoの分析は特に説得力があった。6,852セッションという大規模なデータセットを用い、2月以前と以降で思考ブロックの平均長を比較。結果は「67%の低下」という数字で示された。個人の感覚ではなく、統計的な証拠として機能した。

The Registerは「Claudeが悪化していると、Claudeに聞いたら『はい、以前より能力が制限されています』と答えた」という皮肉なエピソードも報じている(2026年4月13日)。

Anthropicの公式回答:「隠していない、理由もある」

Anthropicのなかで最初にこの問題に正面から応答したのは、Claude Code責任者のBoris Chernyだ。X(旧Twitter)での発言を要約すると以下の通りだ。

  • effortレベルをmediumにデフォルト化したのは、「トークンを使いすぎる」というユーザーフィードバックへの対応
  • 変更はchangelogに記載しており、オプトアウトダイアログも用意していた
  • 「まったく隠し事はしていない(Literally nothing sneaky about it)」

確かにchangelogには記載があった。しかし問題は記載の「見つけやすさ」だ。Anthropicのchangelogは更新頻度が高く、開発者が毎回全文を読むとは限らない。変更の影響が大きいわりに、目立つアナウンスはなかった。

Fortuneの取材に対し、Anthropicの広報担当者は「effortレベルの変更は性能の低下ではなく、コストと品質のバランスを取るための設計上の選択」と回答している。技術的に間違いではないが、その変更がデフォルトで全ユーザーに適用されることを事前に周知しなかった点への批判は、公式回答では十分に答えられていない。

本当の原因はコンピュート不足か?

ユーザーのあいだでは「Anthropicがコンピュートリソースを次世代モデルの学習に振り向けているのではないか」という憶測も広がっている。

根拠として挙げられているのは以下の点だ。

  • Anthropicは競合他社と比べてデータセンター投資規模が小さい
  • Claude Code、Claude.ai、APIの需要が急増しており、インフラへの負荷が高まっている
  • effortレベルを下げることはGPU使用量の削減に直結する

ただしAnthropicはこの憶測を否定している。Boris Chernyは「compute crunchが理由ではない」と明言し、むしろ「ユーザーからコストが高すぎると言われたから変えた」という立場を一貫して維持している。

どちらが真実かを外部から確認する手段はない。ただ一点言えるのは、「トークンを使いすぎる」と訴えたユーザーと「品質が落ちた」と訴えるユーザーが同じプラットフォームに混在している以上、Anthropicがとれる選択は常にトレードオフだということだ。

自分でできる対策:effortレベルを戻す

デフォルトに戻されたeffortレベルは、ユーザー自身で変更できる。Claude Codeを使っている場合、settings.jsonに以下の設定を追加する。

{
  "effortLevel": "high"
}

または"max"に設定することで、以前の挙動に近い状態を再現できる。ただしトークン消費量が増えるため、APIコストやPro/Maxプランの使用量上限に注意が必要だ。

CLIで直接指定する場合は次のようになる。

claude --effort max "your prompt here"
effortレベル変更時の注意点

effortを「max」に設定すると思考トークンが大幅に増加し、1回のタスクで消費するトークン数が数倍になることがある。Claude Code Maxプランでも月次の使用量上限があるため、長時間のエージェントタスクでは特に注意が必要だ。

Claude Opus 4.7でどう変わるか

皮肉なことに、批判が最高潮に達した2026年4月16日と同じ日、AnthropicはClaude Opus 4.7をリリースした。

新モデルでは新たに「xhigh」effortレベルが追加されており、「high」と「max」のあいだの細かい調整が可能になった。推論精度も向上しており、難しいエンジニアリングタスクでの改善が確認されている。高解像度画像対応(最大2,576ピクセル)も追加された。

ただし、いくつかの点には注意が必要だ。

  • 新トークナイザー導入: 同じテキストでも最大35%多くのトークンを消費する可能性がある(AWS Bedrock発表)
  • 価格変更なし: 入力$5/100万トークン、出力$25/100万トークンは据え置き(コストは実質増加)
  • Enterprise価格改定: 月額フラット$200/ユーザーから、$20/ユーザー+使用量課金に変更

Opus 4.7への移行は性能面では改善をもたらす一方、コスト面では慎重な評価が必要だ。

この騒動が示すもの

今回の件は、単なる「性能低下の話」ではない。

AIモデルの品質は目に見えず、変更は静かに行われる。ユーザーが「なんか最近Claudeがおかしい」と感じてから、それがデータで裏付けられるまでに数ヶ月かかった。そのあいだAnthropicは何も公表しなかった。

changelogへの記載は「開示」か「告知」か。その境界線は曖昧なままだ。AIツールがビジネスや開発のインフラになるほど、こうした透明性の問題は影響が大きくなる。

Anthropicは「安全性と透明性を重視する企業」として立ち上がった。今回の批判はその理念と実際の行動のギャップを突いている。どう対応するかは、Anthropicの今後の信頼性に直結する。

Claude Codeのeffort設定、試してみませんか?

effortレベルを「high」に変えるだけで体感品質が変わることがある。詳しい設定方法はClaude Code完全ガイドで解説している。

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本記事の情報は2026年4月17日時点のものです。仕様・価格は予告なく変更される場合があります。投資・契約の判断は公式情報を必ずご確認ください。

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