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NSAがAnthropicのMythosを極秘使用中|DoD禁止令とトランプ転回の全貌

「軍は、自社の道具を使うことが米国の国家安全保障を脅かすと裁判所で主張しながら、その道具を実際に使用している」

これはAxiosが2026年4月19日に報じた衝撃的な事実を要約した一文だ(出典: Axios、2026年4月19日)。

国家安全保障局(NSA)が、国防総省(DoD)の禁止令を事実上無視し、AnthropicのAIモデル「Mythos Preview」を使用していると報じられた。PentagonはAnthropicを「サプライチェーンリスク(supply chain risk)」に指定し、連邦機関での使用を禁じている最中のことだ。

そして2026年4月21日、トランプ大統領がCNBCの「Squawk Box」に出演し、この矛盾を一気に解消するかのような発言をした。「取引は可能だ(It’s possible)」と。

この記事はこんな人におすすめ
  • AnthropicとPentagonの争いの続報を追っているエンジニア・PM
  • Claude / Anthropicをメインで使っている開発者
  • AI安全性と政府・軍事利用の境界線に関心がある人
  • サイバーセキュリティとAIの交差点に興味がある人

「禁じているのに使っている」—NSAとPentagonの内部矛盾

2026年2月27日、国防長官Pete Hegsethは公式にAnthropicを「サプライチェーンリスク」に指定した。この指定は本来、HuaweiやZTEなど外国の敵対的企業にのみ適用されてきたものだ。米国のスタートアップに適用されるのは史上初だった。

指定の根拠として政府側が挙げたのは「Anthropicの利用規約に含まれる制限が、国防総省の合法的な活動を妨げる可能性がある」という論理だ。

しかし2026年4月19日、Axiosが衝撃的なスクープを報じた。PentagonのDoDが管轄するNSA(国家安全保障局)が、そのAnthropicの最新モデル「Mythos Preview」を実際に使用していたというのだ。

「政府のサイバーセキュリティ上の需要が、PentagonのAnthropicとの確執に勝ったようだ」とAxiosは記している(Axios、2026年4月19日)。

Slashdotのコメント欄では、あるユーザーが「DoD側の弁護士は実際、Hegseth国防長官の指定発言は”個人的見解”であり、公式な行政行為ではないと主張しているらしい」と指摘した(出典: Slashdot、2026年4月20日)。禁止令そのものの法的性質まで問い直される事態になっている。

なぜNSAはMythosを必要としているのか

NSAがリスクを冒してでもMythosを使う理由は、その能力の桁違いな高さにある。

Anthropicが4月7日に発表した内容によれば、Mythos Previewはテスト期間中に**すべての主要OS(Windows、macOS、Linux)とすべての主要ブラウザ(Chrome、Firefox、Safari、Edge)**でゼロデイ脆弱性を自律的に発見・実証した(出典: TechCrunch、2026年4月7日)。

中でも注目された事例がある。Mythos Previewは17年間見逃されてきたFreeBSDのリモートコード実行脆弱性(CVE-2026-4747)を完全自律で発見し、NFSが動作するマシンのrootを取得するエクスプロイトまで実証してみせた。

この能力は、情報機関にとって二重の意味で価値がある。攻撃面: 敵対国のシステムに存在する脆弱性の発見。防御面: 自国のクリティカルインフラに潜む欠陥の事前修正。

Anthropicはこのモデルの危険性を自ら認め、現在はProject Glasswingの参加約40組織にのみ限定提供している。公式に発表された12組織にはAWS、Apple、Google、Microsoft、Nvidia、JPMorganChaseが含まれる。NSAは公式リストに含まれていないが、それが今回の「スクープ」の核心だ。

ホワイトハウス会談とトランプの急転回

2026年4月17日、Anthropic CEO Dario Amodeiがホワイトハウスを訪問した。面談相手はSusie Wiles大統領首席補佐官とScott Bessent財務長官。Mythos Previewの能力をホワイトハウスの幹部に直接デモしたとみられる。

ホワイトハウスは会談後、「生産的かつ建設的だった(productive and constructive)」との声明を発表した(出典: CNN Business、2026年4月17日)。

その4日後の4月21日、トランプはCNBCのSquawk Boxに出演し、記者に問われた。「将来的にAnthropicの技術を国防総省が使う取引が成立するか」と。

トランプの回答は簡潔だった。「取引は可能だ(It’s possible)」。そして続けた。「彼らは数日前にホワイトハウスを訪問してきた。非常に良い話し合いができた。彼らは非常に頭が良く、(国防総省に)大きく貢献できると思う(They’re very smart, and I think they can be of great use)」(出典: CNBC、2026年4月21日)。

わずか2ヶ月前の2026年2月27日、トランプがTruth SocialでAnthropicを「左翼の狂人たち(Leftwing nut jobs)」と呼び、連邦機関への即時使用停止を命じていた事実を考えると(出典: The Register、2026年2月27日)、この発言転換は劇的だ。

Gizmodoはこの変化を「What finally convinced the Trump administration to back down from its attack on Anthropic may have been Mythos(トランプ政権のAnthropicへの攻撃を止めさせたのは、Mythosだったかもしれない)」と分析している(Gizmodo、2026年4月21日)。

「AI安全性」は取引の対象になるのか

一連の展開が突きつける問いは重い。Anthropicが2月に守ったAI安全性の原則は、今も有効なのか。

Anthropicが契約を拒否した理由は明確だった。「完全自律兵器」と「国内大規模監視」へのClaudeの利用を認めないというレッドラインだ。CEO Dario Amodeiは「良心に照らして、彼らの要求を受け入れることはできない」と公言していた(出典: CNN Business、2026年2月26日)。

しかし今回の和解交渉では、その原則がどこまで守られるかが焦点になる。裁判所はトランプ政権の排除措置を差し止めたが、法的保護があっても商業的圧力は残る。

AnthropicがNSA・DoDと取引を成立させる場合、条件次第ではAI安全性コミュニティから「妥協した」と批判される可能性がある。一方で取引しない場合、Anthropicは$2,000億以上の政府AIマーケットから除外され続けるリスクを抱える。

Security Affairsはこの状況を「From Supply-Chain Risk to National Security Imperative(サプライチェーンリスクから国家安全保障上の必需品へ)」と評した(Security Affairs、2026年4月20日)。

情報機関が実際に使い始めた事実は、交渉の文脈を変えうる。Anthropicにとっては皮肉な、しかし強力な交渉カードになりうる。ただしこれは外部からの分析であり、Anthropicが意図的にそう動いたかどうかは確認されていない。

現在の法的状況

2026年4月8日、連邦控訴裁判所はAnthropicによる「サプライチェーンリスク指定の暫定停止」申し立てを棄却した。3月26日に地裁が出した仮差し止め命令は有効だが、控訴審での逆転可能性も残る。法的決着と政治的和解が並行して進む複雑な局面だ。

この先の注目点

現時点で確定していることと、今後の焦点をまとめる。

確定した事実:

  • NSAはMythos Previewを使用中(Axios、2026年4月19日)
  • Dario AmodeiはWhite Houseと4月17日に会談
  • Trump: 取引「可能」(CNBC Squawk Box、4月21日)
  • 控訴裁判所は暫定停止申し立てを棄却(4月8日)

未確定の焦点:

  • DoD取引の条件(完全自律兵器・監視の制限が維持されるか)
  • 「サプライチェーンリスク」指定の正式撤回時期
  • Mythos Previewの一般公開スケジュール

Anthropicが原則を維持したまま政府との取引を成立させられるか。それとも原則が「交渉可能なもの」として扱われるのか。AnthropicとOpenAIのビジネスモデルの違いが、今まさに試されている。

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本記事の情報は2026年4月22日時点のものです。AnthropicとDoDの交渉は進行中であり、状況は急速に変化する可能性があります。投資・契約判断等は公式情報に基づいて行ってください。

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