Claude API 4月アップデート|Web検索・コード実行・メモリが正式版に
- Claude APIを使ってプロダクトやエージェントを開発しているエンジニア
- Web検索やコード実行をAIアプリに組み込みたい方
- OpenAI APIとの料金・機能比較を知りたい方
「Claude APIのWeb検索、地味に精度上がってない?」
Qiitaユーザーのkai_kou氏が2026年3月末に公開した検証記事が、開発者コミュニティで静かに拡散された。ツールバージョンを1行変えただけで、検索精度が11%向上し、トークン消費が24%減ったという報告だ。
この変化の裏にあるのが Dynamic Filtering(検索結果から不要な情報をコード実行で自動除去する技術)だ。そしてこれは、2026年4月にAnthropicが一斉にGA(General Availability=正式リリース)した複数の機能アップデートの一部にすぎない。Web検索、コード実行、メモリ、プログラマティックツール呼び出し。ベータの段階で個別に試していた開発者も多いだろうが、すべてが正式版になったことで「本番環境に入れていい」フェーズに入った。
この記事では、各機能の技術的な詳細、料金、そして実際に使った開発者の声を整理する。
Web検索 Dynamic Filtering:何が変わったのか
仕組み
従来のWeb検索は、検索結果の生HTMLをそのままコンテキストウィンドウに流し込んでいた。ナビゲーション、フッター、広告。すべてがトークンとして消費される。
Dynamic Filteringでは、Claudeが検索結果を受け取った直後にPythonコードを自動生成・実行し、不要な部分を除去してから推論に入る。いわば「読む前に整理する」プロセスが挟まる。
Zennユーザーのtoku7氏はこの仕組みを詳細に分析し、バックエンドで最大10回の反復ループが走るサーバーサイドのサンプリング機構を発見している(toku7氏の検証記事)。検索戦略をLLM自身に組み立てさせるアーキテクチャは、単純な「検索→要約」とは根本的に異なる。
ベンチマーク結果
Anthropicが公開したベンチマークの数値は具体的だ。
| ベンチマーク | モデル | フィルタなし | フィルタあり | 改善幅 |
|---|---|---|---|---|
| BrowseComp | Sonnet 4.6 | 33.3% | 46.6% | +13.3pt |
| BrowseComp | Opus 4.6 | 45.3% | 61.6% | +16.3pt |
| DeepsearchQA (F1) | Sonnet 4.6 | 52.6% | 59.4% | +6.8pt |
| DeepsearchQA (F1) | Opus 4.6 | 69.8% | 77.3% | +7.5pt |
平均で精度+11%、入力トークン-24%。精度が上がってコストが下がる。ほとんどの開発者にとって見送る理由が少ない改善だ。
※BrowseCompはWeb上の事実検索精度、DeepsearchQAは複雑な調査クエリへの回答精度を測定するベンチマーク。
出典: Improved Web Search with Dynamic Filtering | Claude公式ブログ
使い方
ツールバージョンを web_search_20260209 に指定するだけ。Opus 4.6とSonnet 4.6ではデフォルトで有効になっている。
{
"model": "claude-sonnet-4-6-20260217",
"max_tokens": 4096,
"tools": [
{ "type": "web_search_20260209", "name": "web_search" },
{ "type": "web_fetch_20260209", "name": "web_fetch" }
],
"messages": [{ "role": "user", "content": "..." }]
}
ベータヘッダーは不要。GA(一般提供)済みだ。
料金
- Web検索: 1,000検索あたり$10(+通常のトークン課金)
- Webフェッチ: 追加料金なし(通常のトークン課金のみ)
- Dynamic Filteringのコード実行: 無料
この料金設定は競合と比較すると明確な優位性がある。OpenAIのWeb検索は1,000クエリあたり$25〜30。さらにOpenAIは1回の検索ごとに8,000入力トークンのブロック課金が加算される。Claudeの方が半額以下だ。
開発者の声
kai_kou氏(Qiita)はベンチマーク通りの改善を確認しつつ、注意点も指摘している。
Dynamic FilteringはGoogle Vertex AIでは利用不可。Claude APIとAzureのみ対応。ゼロデータリテンション(ZDR)とも併用できない。本番導入前に実際のクエリセットで事前評価すべき
note.comのしおどめ氏は、Dynamic Filteringを活用した「RAGレス」エージェント開発を紹介し、従来のRAGパイプラインと比べて80%のコスト削減が可能だと報告した。自前のベクトルDBやインデックス構築が不要になるケースがある、という主張だ。
ただし批判的な声もある。Wire創設者のChristopher Helm氏は、Claude Codeのソースコード流出をきっかけにWeb検索の内部処理を分析した。検索結果のHTMLからMarkdownへの変換にカスタム設定がなく、JSON-LDやalt-textが除去される点を問題視している。107の事前承認ドメイン以外はHaikuモデルが125文字制限で要約する構造も明らかになった。
Dynamic FilteringはClaude API(Anthropic直接)とMicrosoft Azureでのみ利用可能だ。Amazon BedrockやGoogle Vertex AI経由では使えない。Vertex AIユーザーがこの機能を使いたい場合は、Web検索部分だけAnthropic APIを直接呼ぶ構成を検討する必要がある。
コード実行ツール:GA化で何ができるようになったか
コード実行ツールは2025年8月のベータ開始から約半年を経て正式版になった。
できること
サンドボックス化されたコンテナ内でPythonとBashを実行できる。コンテナのスペックは以下の通り。
- Python 3.11.12、Linux x86_64
- RAM 5GiB、ディスク 5GiB、CPU 1コア
- インターネットアクセスなし(完全サンドボックス)
- コンテナの有効期限: 作成から30日
- アイドルタイムアウト: 4.5分
pandas、numpy、matplotlib、scikit-learnなど主要なデータ分析ライブラリがプリインストールされている。
料金体系
ここが重要だ。
- Web検索・Webフェッチと併用時: 無料
- 単体利用: 月1,550時間の無料枠。超過分は$0.05/時間/コンテナ
月1,550時間は、1日あたり約50時間。個人開発者やスタートアップなら無料枠内で収まるケースがほとんどだろう。
競合との比較
ChatGPTのCode Interpreterはブラウザ内でのインタラクティブなデータ分析に強い。CSVをアップロードして即座にグラフ化する体験は洗練されている。
一方でClaudeのコード実行はエージェント的な自律実行に向いている。コードを書き、実行し、エラーを確認し、修正する。このループを人間の介入なしに回せる点が、Claude Agent SDKと組み合わせたときに真価を発揮する。
メモリツール:会話を超えた記憶
メモリツールもGA化した。2025年9月のベータから約7か月。
仕組み
/memories ディレクトリにファイルとして情報を保存・読み出しする、クライアントサイドのツールだ。ストレージの実体はアプリケーション側にあるため、開発者が完全にコントロールできる。
対応操作:
view— ディレクトリやファイルの内容を表示create— 新規ファイル作成str_replace— テキスト置換insert— 指定行に挿入delete— ファイルやディレクトリを削除rename— ファイル名の変更
パフォーマンス
Anthropicの内部評価では、メモリツールとコンテキスト編集の組み合わせでベースラインから39%の性能向上を確認。100ターンのWeb検索評価ではトークン消費が84%削減されたという。
長時間のエージェントセッションで「同じことを何度も聞いてくる」問題が大幅に緩和される。PMとして複数のAIツールを評価してきた立場から言えば、メモリ機能の有無はエージェントの実用性を左右する決定的な要素だ。
プログラマティックツール呼び出し:トークン消費が1/10に
これは地味だが影響が大きい機能だ。
従来、Claudeが複数のツールを呼び出すたびにモデルとの往復が発生し、各ツールの結果がトークンとして消費されていた。プログラマティックツール呼び出しでは、Claudeがコード実行コンテナ内からツールを直接呼び出す。
10個のツールをプログラマティックに呼び出した場合、トークン消費は直接呼び出しの約1/10。
ツール定義に allowed_callers フィールドを追加するだけで有効にできる。
{
"name": "get_weather",
"allowed_callers": ["direct", "code_execution_20260120"]
}
ただし制約もある。MCP(Model Context Protocol、AIと外部ツールをつなぐ標準プロトコル)コネクタ経由のツールはプログラマティック呼び出しに対応していない。構造化出力(strict: true)との併用も不可だ。
300kトークン出力と1Mコンテキストの変更
300k出力(Batches API限定)
output-300k-2026-03-24 ベータヘッダーを指定すると、max_tokens の上限が300,000に引き上げられる。Opus 4.6とSonnet 4.6で利用可能。ただしBatches API(非同期で大量のリクエストを一括処理するAPI)のみの対応で、リアルタイムAPIでは使えない。
1回の生成に1時間以上かかることもある。24時間のバッチ処理ウィンドウ内で計画的に使う必要がある。
1Mコンテキスト:旧モデルは4月30日に終了
Claude旧モデル一斉終了の記事でも触れたが、2026年4月30日をもってSonnet 4.5とSonnet 4の1Mコンテキストベータが終了する。context-1m-2025-08-07 ヘッダーは無効になり、20万トークンを超えるリクエストはエラーを返す。
一方、Opus 4.6とSonnet 4.6では1Mコンテキストが標準機能として無料で使える。ベータヘッダー不要、追加料金なし。90万トークンのリクエストも9千トークンのリクエストも、トークン単価は同じだ。
移行していないプロジェクトは、今月中に対応が必要だ。
Sonnet 4.5 → Sonnet 4.6への移行は基本的にドロップインで動作する。APIのモデルIDを claude-sonnet-4-6-20260217 に変更し、ベータヘッダーを削除するだけだ。ただし出力の傾向が若干変わる可能性があるため、テストは必須。
競合との立ち位置
2026年4月時点でのAPI機能比較を整理する。
| 機能 | Claude API | OpenAI API | Perplexity Sonar | Gemini |
|---|---|---|---|---|
| Web検索コスト | $10/1K検索 | $25〜30/1K検索 | $5/1Kリクエスト(raw) | Vertex AI従量課金 |
| 検索精度の独自技術 | Dynamic Filtering (+11%) | 幅広いWebインデックス | 引用精度が最高 | Google検索インデックス直結 |
| コード実行 | サンドボックス+エージェント的自律実行 | ブラウザ内データ分析 | なし | API単位で利用可能 |
| コンテキスト長 | 1M トークン | 128K〜1M(モデルによる) | モデル依存 | 1M+ |
OpenAIは「スーパーアプリ」戦略でChatGPTにブラウザ・Codex・アプリストアを統合する方向に舵を切っている。Apps SDKはMCPベースで構築されており、皮肉にもAnthropicが提唱したプロトコルがOpenAIのプラットフォームの基盤になっている。
Anthropicは消費者向けプラットフォームではなく、開発者向けインフラに集中している。ツールの精度と料金で勝負する姿勢は、PMとして見ると筋が通っている。プラットフォームの覇権争いはOpenAIとGoogleに任せ、その両者のプラットフォーム上で動くエージェントの「頭脳」を提供する。実際、Microsoft Copilot CoworkはClaudeとGPTの両モデルを搭載しており、マルチモデル時代の到来を裏付けている。
電脳狐影の評価
PMとして率直に言う。今回のGA一斉リリースは、個々の機能より**「全部揃った」こと**に意味がある。
Web検索で情報を取り、コード実行でデータを整理し、メモリで前回の結果を覚えておく。このループが全て正式版になったことで、本番環境のエージェントに安心して組み込めるようになった。
自分なら、まずDynamic Filteringから試す。ツールバージョンを1行変えるだけで精度が上がりコストが下がる。コード変更が最小限なので移行コストが極めて低い。
ただし懸念もある。Vertex AIやBedrockのユーザーは恩恵を受けられない機能が多い。Anthropicが直接APIを優遇する傾向が強まっている点は、クラウドベンダー経由で利用している企業にとって無視できないリスクだ。
Claude APIを試してみる
Dynamic Filteringは既存のWeb検索ツールのバージョンを変更するだけで有効になる。無料枠内で十分に検証可能だ。
関連記事
- Claude Sonnet 4.6レビュー|SWE-bench 79.6%でOpus級性能をSonnet価格で
- Claude Agent SDK完全ガイド|Anthropicが「Claude Codeの頭脳」を開発者に公開
- MCP実践ガイド|AIエージェントと外部ツールをつなぐ新標準プロトコル
- Claude旧モデル一斉終了|Haiku 3は4月19日廃止、移行しないとAPI停止
※記事内の料金・仕様は2026年4月4日時点の情報に基づく。最新情報はClaude API公式ドキュメントを確認のこと。
出典: