Ultracodeで170万トークンが消えた: Claude Code最新機能の実際のリスク
「62体のOpus 4.8サブエージェントを起動したら、5時間分のクレジットを18分で使い切った」。Hacker Newsのスレッドに投稿されたこのコメントが、Claude Codeの新機能Ultracodeの本質的な問題を示している(出典)。さらに深刻なのはリリース2日後の5月30日、あるユーザーがUltracodeのサブエージェントループに巻き込まれ、170万トークンを消費したにもかかわらず出力がゼロだった事例だ(AI Weekly)。Anthropicに返金を求めたが、拒否された。
Claude Opus 4.8とともに2026年5月28日にリリースされたDynamic Workflows。その中核設定であるUltracodeは、単一セッションで数十〜数百のAIエージェントを並列動作させる「AIによるAIの調整」を実現する。大規模コードベースの監査やマイグレーションで圧倒的な威力を発揮する一方、安全機能の欠如と無返金ポリシーの組み合わせが、すでに複数の企業に実害を与えている。
- Claude CodeのMaxプランまたはTeamプランを使っているエンジニア
- UltracodeやDynamic Workflowsを本番環境に導入しようとしている開発チーム
- Claude Codeの月額コストを管理したいフリーランス・個人開発者
- Anthropicの課金ポリシー変更(6月15日施行)の影響を受けるすべてのユーザー
Ultracodeとは何か
Ultracodeはモデルではなく、Claude Codeのセッション設定だ。Claude Code v2.1.154以降(2026年6月4日時点の最新はv2.1.161)で利用でき、2つの要素を組み合わせる。
1つ目はxhigh推論エフォート。通常の「high」よりさらに多い計算リソースをClaudeに与え、より深い推論を実行させる。2つ目はDynamic Workflowsの自動調整。Claudeが自らJavaScriptのオーケストレーションスクリプトを書き、別ランタイムがそのスクリプトを実行する。結果として1セッションで最大16の並列サブエージェントが動き、合計最大1,000エージェントを調整できる。
起動方法はシンプルだ。チャットに「ultracode」とキーワードを打つか、設定メニューからONにするだけ。v2.1.160以前は「workflow」キーワードが使われていたが、現在は「ultracode」に変更された。
プランによるデフォルト設定が異なる。 MaxとTeamプランはデフォルトON。Proプランは/configから手動で有効化する必要があり、Enterpriseは管理者が組織全体で有効化する形になる。いずれのプランでも、6月15日以降はAgent SDKクレジットの専用プールから消費されるため注意が必要だ(詳細: Claude Agent SDK課金分離解説)。
なぜループが起きるか: 安全機能の欠如
問題の核心は設計上の判断にある。UltracodeのサブエージェントはすべてOpus 4.8で動作し、スペンドキャップも自動停止機能も持たない。
通常のClaudeセッションでは、エラーが発生すると次の処理に移るか停止する。しかしUltracodeのオーケストレーションスクリプトが「タスクが完了していない」と判断し続けると、新たなサブエージェントを起動し続ける。各サブエージェントはOpus 4.8のフルレートで推論を実行するため、ループが1分継続するだけでも数万トークンが消える。
HNユーザーが詳述した別の事例では、「比較的小さなパッケージのレビューのために約90体のエージェントが動いていた」という。意図は数エージェントだったが、Claudeが自律的にスケールアップした。一部のユーザーからは**「tokenmaxxing disguised as a product(製品に偽装したトークン最大化戦略)」**と批判する声も上がっている(AI Weekly)。これは個人の見解であり、本記事の立場を代表するものではない。
プランごとの実コスト計算
Ultracodeのコストを理解するには、まずAgent Teamsの消費量を把握する必要がある。Anthropicの公式ドキュメントによると、Agent Teamsを使ったセッションは通常セッションの約7倍のトークンを消費する。各サブエージェントが独立したコンテキストウィンドウを持つためだ(出典)。
Claude Opus 4.8の標準APIレート(入力$5/MTok、出力$25/MTok)で試算すると以下になる(出典: claude.com/pricing)。
| プラン | 月額Agent SDKクレジット | 標準Opus 4.8換算の入力上限 | Ultracode想定セッション数(7倍コスト係数適用) |
|---|---|---|---|
| Pro | $20 | 約400万トークン | 10〜20セッション |
| Max 5x | $100 | 約2,000万トークン | 50〜100セッション |
| Max 20x | $200 | 約4,000万トークン | 100〜200セッション |
ただしループが発生すれば、この計算は根拠を失う。170万トークンをドル換算すると、入力主体であっても最低$8〜最大$40程度になる。Max 20xユーザーが月の5〜20%を単一の失敗セッションで消費しうる計算だ。
6月15日以降はさらに深刻になる。 AnthropicはAgent SDKクレジットをサブスクリプションから切り離し、クレジットは翌月繰り越し不可・返金不可になる。Ultracodeが暴走したクレジットは永久に失われる(6月15日の課金変更詳細)。
Anthropicの無返金ポリシー: 実際に何が起きているか
GitHubのイシュー#45497では、Proプランユーザーが誤ってextra usageクレジットから約$60が引き落とされた件を報告した。Anthropicの自動返答は「タイムフレーム外のため返金適格外」とし、4日前の請求だったにもかかわらず即座に会話を終了した(イシューは後にinvalid + staleラベルで閉じられた)。
一方で、2026年4月のHERMES.mdバグ事件(Anthropicの請求システムのバグが引き起こした$200超の過剰請求問題)では、「返金不可」とした初期対応がHacker Newsで828アップボートを集めて炎上した後、Anthropicは方針を覆して返金+$200クレジットを約束した。この事例は、返金の可否が契約文言だけでなく、ユーザーからの圧力によっても変わりうることを示唆している。
Ultracodeのループによるトークン消費については、機能不具合による損失でも返金されなかった事例が報告されている。利用規約上、トークン消費は原則返金対象外と明記されている。
企業への実害: MicrosoftとUberのケース
個人ユーザーの問題にとどまらない。AI Weekly の報告によると、Microsoftはエンジニア1人あたり月$500〜$2,000に達するClaude Codeのライセンスコストを理由に、ライセンスを撤回した(出典)。Uberは2026年4月時点ですでに年間AI予算を使い切ったと報告されており、Claude Codeへの集中投資が一因とされている(Uber Claude Code AI予算解説)。
エンタープライズで問題が顕在化している理由は明確だ。EnterpriseプランはデフォルトでDynamic Workflowsがオフだが、管理者が有効化すると組織全員に影響する。しかもチームメンバー間でAgent SDKクレジットをプールする機能はなく、各ユーザーが個別に上限まで消費できる状態になる。
開発者の反応: HNとRedditの声
2026年5月28日以降のHNスレッド(Anthropic scales Claude Mythos to critical infrastructure)では以下の声が集まった。
あるユーザーは「UltracodeはClaude Codeを使っている全員にとって潜在的なリスクだ。Max 20xでも上限がある以上、重要な仕事の途中でクレジットが切れる可能性を常に計算に入れなければならない」と書いた。
別のユーザーは信頼性への不満を露わにした。「ランが頻繁に途中で止まる。70%まで進んで諦める、というのが繰り返される。エラーが出て再起動すると最初からやり直しになることもある」。
findskill.aiがr/ClaudeAIから引用した投稿では、Max 20x(月$200)ユーザーが「初日の1セッションで週間トークン上限の20%を消費した」と報告。別のProユーザーは「設定でONにしてタスクを走らせたら10分でクレジット上限に達した」と述べた。
肯定的な声もある。Bun作者のJarred Sumnerは実際にDynamic Workflowsを使い、BunをZigからRustへ移植した。Anthropicの公式ブログでは約75万行のRustコードを11日で生成したとされているが(出典)、Sumner本人はXで「6日」「96万行(960,000 LOC)」と異なる数字を述べており、正確な数値は出典によって異なる(Sumner on X)。いずれにせよ、既存テストの99.8%をパスさせた事実は複数ソースで確認されている。こうした大規模タスクでは、条件が合えばリスクに見合う結果が得られる可能性がある。
Ultracodeを安全に使うための設定
Ultracodeが「使えない機能」ではないことも強調しておく。正しく使えば、大規模コードベースの監査・マイグレーション計画・競合仮説の並列検証など、単一エージェントでは非現実的なタスクを達成できる。問題はコスト管理の仕組みが薄いことであり、それを補う使い方が必要だ。
まず月次スペンド上限を設定する
Pro/Maxユーザーは/usage-creditsコマンドで月次スペンド上限を設定できる(公式ドキュメント)。APIやTeamプランの場合はAdmin Consoleでワークスペースの使用量上限を設定する。上限に達するとClaude Codeが通知し、引き上げまたは解除を求めるプロンプトを出す。これがUltracode実行前の最低限の安全網だ。
実行前に計画を確認する
Ultracodeを使う前に「まずワークフロー計画だけを見せてくれ、実行はしないで」と指示する。Claudeが生成するオーケストレーションスクリプトを確認し、エージェント数・タスクの範囲・終了条件が適切かを判断してから承認する。
ユースケースを選ぶ
LaoZhang AI Blogの分析によると、Ultracodeが適しているのは「規模が大きく、並列化が有効で、完了条件が明確なタスク」に限られる(出典)。
適したユースケース:
- 大規模コードベース全体のセキュリティ監査
- 複数ファイルにわたるAPIマイグレーション
- 大量のテストケース並列実行
- 競合アーキテクチャ案の並列評価
不適なユースケース:
- 単一ファイルの編集やリファクタリング
- 単純なバグ修正
- 短い質問への回答
- 出力の正確さより速さが重要な作業
Proユーザーへの注意
Proプラン(月$20)でもDynamic Workflowsは/configから手動で有効化できる。しかし6月15日以降、Agent SDKクレジットはProプランで月$20の専用プールになり、Ultracodeが暴走すれば即座に上限に達する。Pro加入者がUltracodeを使う場合は、月次スペンド上限の設定を必須にすることを推奨する(xhigh時代のフリーランス損得勘定)。
2026年6月4日現在の状況: AnthropicはUltracode/Dynamic Workflows専用のサーキットブレーカーや暴走検出機能をまだ実装していない。Anthropicの公式コメントでも、この問題を「近い将来に対処する」とした具体的なタイムラインは示されていない。使用前に月次スペンド上限の設定を強く推奨する。
Claude CodeのOpus 4.8とDynamic Workflowsの詳細な機能比較についてはClaude Opus 4.8完全ガイドを参照。Dynamic Workflowsのアーキテクチャと実際の性能についてはClaude Code Dynamic Workflows完全解説で詳しく扱っている。
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本記事の情報は2026年6月4日時点のものです。Claude CodeのバージョンアップやAnthropicのポリシー変更により、記載内容が変わる場合があります。公式ドキュメント(code.claude.com/docs)で最新情報を確認してください。本記事はAnthropicの公式見解を代表するものではありません。