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Googleから6日間で4名の上級AI研究者が流出|AnthropicとOpenAIの引き抜き戦争

「Google is in BIG TROUBLE」。2026年6月24日、AIエンジニアのX(旧Twitter)でこの一言が急速に広まった。Googleのトップ研究者2名がAnthropicへ移籍するとBloombergが報じた直後のことだ(Bloomberg, 2026年6月24日)。

わずか6日間で、GoogleはAI研究のトップランナー4名を立て続けに失った。Transformerの共著者、ノーベル賞受賞者、AlphaFold 3の開発者、Geminiの事前学習設計者。一人ひとりが業界の教科書に名前が載る人物だ。

この記事はこんな人におすすめ
  • GoogleとAnthropicのAI競争力の変化を追っているエンジニアやプロダクトマネージャー
  • AnthropicまたはOpenAIのIPO投資機会に関心があるビジネスパーソン
  • AI人材獲得戦略の動向を把握したい採用担当者・経営者

6日間で4名:タイムラインで見る離脱の連鎖

6月18日から24日の間に起きた離脱は以下の通りだ(Bloomberg, 2026年6月24日TechCrunch, 2026年6月24日)。

日付研究者Google内での役割移籍先
6/18Noam ShazeerGemini共同責任者・Transformer共著者OpenAI
6/19John JumperAlphaFold2・2024年ノーベル化学賞Anthropic
6/24Jonas AdlerAlphaFold 3・Geminiコーディング担当Anthropic
6/24Alexander PritzelGemini事前学習担当Anthropic

発端はShazeerの離脱だった。GoogleはShazeerを取り戻すため2024年に27億ドルを費やしてCharacter.AIを実質的に買収した。ところが移籍からわずか2年を待たず、彼はOpenAIへと渡った(CTech, 2026年6月18日)。Sam Altmanは「10年越しの夢が叶った」とXに投稿している。

これは今年初めての衝撃でもなかった。1月には強化学習の第一人者David SilverがDeepMindを去り、独自スタートアップIneffable Intelligenceを創業。4月に11億ドルを調達していた(TechCrunch, 2026年4月27日)。

Alphabetの株価は6月22日に最大7%下落し、時価総額から2,250億ドル超が吹き飛んだ。年内最大の1日下落幅だ(CNBC, 2026年6月22日)。

離脱した研究者たちは何者か

Anthropicへ向かった2名は、Googleにとって失ってはならない核心人材だった。

Jonas AdlerはKTH王立工科大学で数学の博士号を取得したシニアスタッフリサーチサイエンティストで、AlphaFoldとAlphaFold 3の中心開発者の一人だ。Geminiではコーディング機能の設計を担い、ノーベル賞を受賞したJohn Jumperとも密接に協働した(KTH Jonas Adler profile)。

Alexander Pritzelは2017年12月からDeepMindに在籍し、Geminiの事前学習(pretraining)プロセスを担ってきた。現代LLMの性能の大半は事前学習の質で決まる。この役職の喪失は次期Geminiの設計能力に直接影響しうる(Bloomberg, 2026年6月24日)。

一方、John Jumperはこう記した。「9年近くを経て、Google DeepMindを離れAnthropicに加わることを決めた。DemisはPhD取得からわずか6ヶ月の私をAlphaFoldチームのリードに抜擢してくれた。その機会に心から感謝している」(John Jumper on X, 2026年6月19日)。

そしてShazeerの離脱が一つのことを象徴する。2017年の論文「Attention Is All You Need」——Transformerアーキテクチャを生み出し現代LLMの基盤となったこの論文——の共著者8名全員が、これでGoogleを離れた(FourWeekMBA, 2026年6月)。

なぜGoogleではなくAnthropicへ?IPO前株式という「最後のチャンス」

移籍の理由を「カネだけ」と見るのは正確ではない。ただカネの話は外せない。

Anthropicは2026年6月1日にIPOに向けた機密S-1書類をSECへ提出した。10月のNasdaqへの上場を目指し、バンカーは1兆ドル超での株式公開を基本シナリオと描く。5月末に締め切ったシリーズHラウンドでは650億ドルを調達し、評価額は9,650億ドルに達した(TechCrunch, 2026年5月28日)。2023年に10万ドル分の株式を受け取った社員は、現在の評価額ベースで約2,350万ドルの含み益を持つ計算になる。

Alphabetの時価総額はすでに4兆ドルを超える。その株式が10倍になる余地はほぼない。AnthropicのIPO前株式に数倍の上昇を期待する投資家は多く、研究者にとってこれは「一生に一度の窓」と映った(※投資判断については末尾の免責事項を参照)。

カネ以外の引力もある。Bloomberg取材によれば、Shazeerは自身のプロジェクトの計算リソースがロンドンの別チームに転配される経験を経て離脱を決めた。Anthropicは規模が小さく、個人の研究意図が通りやすい。安全性を優先したAI開発という使命は、研究成果の意義を問いたい研究者には強く響く(Techloy, 2026年6月)。

VCデータも示唆的だ。SignalFire(2025年)の分析によれば、DeepMindのエンジニアがAnthropicへ転職する確率は逆方向の11倍。Anthropicの2年間定着率は80%でフロンティアAIラボ最高を誇る。2026年5月にはOpenAI共同創業者のAndrej KarpathyもAnthropicの事前学習チームに合流した(Axios, 2026年5月19日)。

Geminiへの影響と「Googleの沈黙」

Gemini 3.5 Proのリリースは当初6月予定だったが7月にずれ込んだと複数の報道が伝える(Startup Fortune, 2026年6月)。Googleは公式コメントを出していない。

Demis Hassabis CEOはカンヌライオンズでSemaforに語った。「わが社は他のどのラボよりはるかに広い研究人材を抱えている。これはAI業界史上最も激しい採用競争だ」(Semafor, 2026年6月23日)。Bloomberg取材ではDeepMindのスタッフが「コーディングAIを構築する企業向けの明確なプロダクトが欠如している」と懸念していることも明らかになった。FourWeekMBAは辛辣にまとめる——「Googleはリサーチを発表する。OpenAIとAnthropicは製品をリリースする」(FourWeekMBA, 2026年6月)。

一方Jefferies等の強気アナリストは「ノイズにすぎない」として強気スタンスを維持。Q1 2026のGoogleのEPS成長率は82%に達しており、4兆ドル企業の土台は揺るがないという見立てもある。

光と影:頭脳流出が示す業界の構造変化

肯定的に見れば、これはAnthropicの磁力を証明する話だ。ノーベル賞受賞者、Transformer共著者、AlphaFold開発者を次々と引き寄せるAnthropicは、「AIサイエンスの新中心地」になりつつある。

影の側面も無視できない。最精鋭の頭脳が資金力のある少数のラボに集中することは、AI開発における権力集中のリスクを孕む。また採用競争の激化は、研究大学や中小AIスタートアップが人材を確保する余地を狭める。

6月25日前後にはGemini 2.5の開発に貢献したArthur Conmy上級研究エンジニアもAnthropicのAI安全部門への合流を表明した。頭脳流出は6月24日で止まっていない。DeepMindのUK拠点では5月、ペンタゴン契約への反発から労組設立の票決が実施され、組合員の98%が賛成した(Fortune, 2026年5月5日)。人材流出は市場原理だけでなく、AIガバナンスへの内部不満も反映している。

プロダクト判断の視点からは、Anthropicが世界最高峰の研究者を継続的に獲得していることは、Claudeの技術的優位性が中長期的に強化される可能性を示す。一方でGeminiを採用する日本企業のエンジニアは、Googleの研究リソースの分散と人材流出が製品ロードマップにどう影響するかを注視しておく価値がある。

この件で押さえておきたい数字
  • 6日間で4名超の上級AI研究者がGoogleを離脱(2026年6月18〜25日)
  • Alphabetの株価は6月22日に最大7%下落、時価総額から最大2,690億ドルが消失
  • AnthropicのIPO目標評価額は1兆ドル超(2026年10月Nasdaq上場目標)
  • DeepMindエンジニアがAnthropicへ転職する確率は逆方向の11倍(SignalFire, 2025年)
  • 「Attention Is All You Need」の共著者8名全員がGoogleを離脱済み

AIツール選定の判断材料に — AnthropicとGoogle DeepMindの競争力の変化を追い続けるには、and-and.devのRSSまたはブックマークを活用してほしい。Claude Fable 5のレビューAnthropicのIPO詳細もあわせて確認を。

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本記事に記載の情報は執筆時点(2026年6月26日)のものです。人事・株価情報は変動する可能性があります。投資に関する判断は自己責任でお願いします。

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