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オゼンピック製造元×Anthropic|Novo NordiskがClaude Scienceで創薬加速【2026年9月】

「2年かかっていた文献レビューが数週間でできるようになった」。アレン脳科学研究所(シアトル)の神経科学者ジェローム・ルコック准研究員は、Claude Scienceの試験運用についてそう語った(The Scientist, 2026年7月)。

このツールを本格導入に向けた提携を、2026年9月16日にオゼンピックとWegovyで知られるデンマークの製薬大手Novo Nordiskが発表した。相手はAnthropic。AI創薬ワークベンチ「Claude Science」を研究開発の中核に据え、生物学的推論と医薬品開発の加速を目指す。

この記事はこんな人におすすめ
  • Claude Scienceの実力を製薬・研究の文脈で把握したいAI活用担当者・研究者
  • Novo NordiskのAI戦略の全体像(OpenAI・AWS・Anthropic3社体制の意味)を知りたい方
  • AI創薬の「期待と現実のギャップ」を公正に理解したい製薬業界関係者・投資家

Novo Nordiskが3社目のAI提携にAnthropicを選んだ理由

Novo Nordiskの2026年のAI戦略は、3本のパートナーシップで構成されている。

  • 4月(OpenAI):R&D・製造・サプライチェーン・商業業務を横断する全社AI基盤。候補化合物の特定、複雑データの解析、試験からの市場投入までの時間短縮を目標とする(FiercePharma, 2026年4月)。
  • 8月(AWS):ロンドンのKing’s Cross施設にAI共同イノベーションハブを開設。同社・AWS共同発表によれば、Amazon Bio DiscoveryとBedrockを使い、25,000人以上の従業員の生産性向上と臨床文書作成の大幅短縮を実現したとされる(GlobeNewswire, 2026年8月10日)。
  • 9月(Anthropic):科学的推論に特化したClaude Scienceを創薬の核に置く。

3つ目にAnthropicを選んだ背景には具体的な実績がある。Novoはすでに自社内でAWS BedrockとClaude Codeを使って「NovoScribe」という臨床試験文書作成プラットフォームを構築済みだ。同社の発表によれば、試験文書作成を10週間超から10分へ短縮し、デバイス検証プロトコル工数を90〜95%削減したという。Claude Scienceは、その実績の延長線上にある(Inc., 2026年)。BMS×Anthropicの全社展開事例と並び、製薬大手のClaude本格採用が加速している。

Novo Nordiskの社長兼CEO、マイク・ドゥースタールはこう語る。「Anthropicと力を合わせることで、私たちのR&D組織を飛躍的に強化し、慢性疾患を抱える人々に新たな変革的医療ソリューションをもたらすというミッションを推進できる」(BioSpace / GlobeNewswire, 2026年9月16日)。

Anthropic CEOのダリオ・アモデイも「AIの進化は、100年分の生物学・医学の突破口を10年に圧縮する可能性をもたらす」と述べた(Anthropicプレスリリース, 2026年9月16日)。

Claude Scienceとは何か

Claude Scienceは2026年6月30日にパブリックベータとして公開されたワークベンチだ。新しいモデルではなく、既存のClaudeモデルの上に科学専用のツール・データベース・計算連携を重ねたアプリケーションである。

主な機能と連携:

  • 60以上のスキルとコネクタ(ゲノミクス・単細胞解析・プロテオミクス・構造生物学・ケモインフォマティクス対応)
  • UniProt・PDB・Ensembl・ReactomeなどからなるデータベースへのAIエージェントによる直接クエリ
  • NVIDIA BioNeMo Agent Toolkitとの統合(Evo 2、Boltz-2、OpenFold3によるGPU加速ワークフロー)
  • タンパク質3D構造・ゲノムブラウザトラック・化学構造のネイティブ可視化
  • 引用と計算を検証するレビュアーエージェント(ミスをフラグし修正)
  • HPC/Slurm・SSH経由のリモートクラスター接続

使い方の基本は「自然言語で研究タスクを依頼する」。調整エージェントがサブエージェントを起動し、データ取得から解析・可視化・文献検証まで一気通貫で処理する。成果物にはコード・環境・会話履歴が付属し、再現性が担保される(Anthropic, 2026年6月30日)。

実際に使った研究者たちの評価

ベータ利用者の声は概ね「加速は本物、ただし注意も必要」という内容だった。

アレン脳科学研究所(ジェローム・ルコック准研究員):最大2年かかっていた文献レビューを数週間に短縮。100ページを超える文献レビューを10本以上作成した。レビュアーエージェントが引用をチェックする点を評価しつつ、「AIはデータを問いただす科学者の訓練をまだ十分に積んでいない」と指摘した(The Scientist, 2026年7月)。また、査読論文へのアクセスが制限されている点を課題として挙げた。

UCSF脳腫瘍センター(スティーブン・フランシス准教授):神経膠腫の分子疫学研究で、生殖細胞系列解析を従来の10分の1の時間で完了し、独立したバリデーションでも結果が一致した。一方、ヘルペスウイルスと脳腫瘍に関する一部プロンプトがバイオセキュリティガードレールにより拒否され、「制限が厳しすぎる」とも述べた(Explainx.ai, 2026年7月)。

Manifold Bio(組織標的型医薬品スタートアップ):表面発現・輸送・安全性の評価から始まる標的同定ワークフローを一気通貫で実行。「一般的なコーディングアシスタントと違い、過去のプログラムの文脈を保持したまま、適切なデータを集めて判断を下せる点が差別化になった」と評価した(MarkTechPost, 2026年7月4日)。

影:まだ解決されていない本質的な問題

「AI創薬」への期待は大きいが、業界の実態はより慎重だ。

FDA承認薬はまだゼロ。2026年9月時点で、AI主導で設計・発見された薬でFDA承認を受けたものは1件もない(ASCO 2026ピアレビュー分析)。2024年だけで89億ドルが業界に流れ込んだにもかかわらず、だ(Clinical Trial Vanguard)。

最も前進しているInsilico MedicineのIPF治療薬「Rentosertib」でさえ、2026年7月にようやく第III相試験が始まったばかりだ。候補薬の標的同定から第II相まで30か月未満という前期実績は確かに速い。だが後期臨床から承認申請まで(従来の開発では全体の半分以上を占める段階)は、また別の話だ。

こうした前期の壁を越えた後も、課題は続く。創薬のボトルネックはAIが苦手な部分にある。Immunaiの共同創業者兼CEO、ノーム・ソロモンはこう言い切る。「創薬は〈課題の食物連鎖〉においては軽い問題だ。本当に難しいのは、臨床試験で薬を成功させることで、AIはそれをまだ解決していない。必要な患者データは製薬企業と医療機関に集中しており、AIスタートアップには渡っていない」(CTech, 2026年7月)。

LLMのハルシネーション問題は製薬の文脈では特に深刻だ。「制約なしのエージェントはツール使用のハルシネーション、再現性の欠如、厳格なSOPへの不適合という問題を抱えやすい」と、創薬エージェント向けガバナンス研究は警告する(arXiv:2603.04655, 2026)。

さらに2026年9月18日、AnthropicはNovo提携発表から2日後に物理的なウェットラボを米ベイエリアに設立していたことが明らかになった(TechCrunch, 2026年9月18日)。Anthropicの創薬戦略の全体像を見ると、AIだけで創薬が完結しないことをAnthropicも十分に認識していることがわかる。ライフサイエンスヘッドの言葉が全てを表している。「生物学の最終検証は実験室での実作業に、しばらくの間はかかり続ける」。

日本の製薬企業はどこにいるか

日本の主要製薬企業もAI創薬競争に参戦している。

アステラス製薬は人間・AI・ロボティクスを組み合わせた独自の創薬プラットフォームを展開し、ヒット化合物の特定から候補薬選定までの時間を約70%短縮したと発表した(PHARMA JAPAN, 2026年)。小分子にとどまらず、タンパク質分解誘導薬(TPD)・ペプチド・遺伝子療法へと拡張中だ。

一方、中外製薬は2026年1月、唯一のAI支援抗体プログラム「BRY10」を臨床パイプラインから撤退させた。「AI×創薬の可能性への期待は変わらない」としながらも、この事例は後期臨床での難しさをあらためて示した(Fierce Biotech, 2026年)。

インフラ面では三井物産とNVIDIAが共同で「Tokyo-1」、日本初の製薬専用生成AIスーパーコンピュータの構築を進めており、アステラス・第一三共・小野薬品が参加を予定している(NVIDIA Blog)。

Claude Scienceを日本の研究機関で使うには

Claude Science(パブリックベータ)はClaude Pro以上の全有料プランに含まれる。日本語でのプロンプトにも対応しているが、連携データベースの多くは英語コンテンツが主体のため、科学論文・データベースアクセスは英語でのクエリが精度面で有利だ。研究機関向けのTeamプランプレミアムシート(月額15ドル・80%割引・1年固定)の申請は現在受付終了しているが、次回募集の情報は公式サイトで確認しておきたい。

Claude Scienceの全機能・使い方を詳しく知りたい方へ

60以上のスキル・ゲノム解析・タンパク質構造可視化・HPC連携まで、Claude Scienceの完全ガイドはこちら。

Claude Science完全解説を読む

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本記事は一般的な報道・企業発表に基づく情報提供を目的としており、投資推奨・医療上の判断の根拠としての使用を想定していません。記事中に言及する承認済み医薬品(オゼンピック等)の効能・効果は既承認内容に基づくものであり、本記事はその変更を示唆するものではありません。創薬プロセスや医薬品の安全性・有効性に関する最終判断は専門家・規制当局の情報をご確認ください。

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